完璧なる評価基準(評定基準)?と絶対評価信仰 親ページへ移動  システム概要とインティックスページへ

平成14年、全国の公立中学校は、文科省の「絶対評価」の採用が望ましいとの指導により、従来の「相対評価」から、「絶対評価」に切り替える県が、全国31都道府県になるという。しかし、「絶対評価」には、教師の主観が入り込んだり、学校間の評価基準の違いから、評価に格差が出るといった懸念が、父母、学校関係者にあるという。(産経新聞14-7-26)

相対評価は、その比較される集団のメンバーが、レベルが低ければ有利、逆に高ければ不利という問題がありました。しかし、全国統一の評定基準があれば、絶対評価も可能だろうか。全国共通のペーパーテストで、点数のみで判定するなら、先生も迷うこともなく、採点するだけで、絶対評価は完結します。しかし、作文の能力はテストでは測れない。ペーパーテストには強くても、教室で発言できない生徒もいる。いつも、満点の優秀な生徒が、試験問題の読み違いで、大きく失点をしてしまった。こんな例外的な事も含んで、評定を決めねばならない。絶対評価に変えて、相対評価の何倍も時間がかかった先生もいたという。

人事評価という、一般の職場における評価と、学校における生徒の評価の違いは、何でしょうか。評定される対象、被評定者である、生徒と職員を比較すると、生徒は、全く同じ課題を学習し、その習得度合いを評価するのに対し、職員は、一般に、全て異なる業務を分担しており、その内容の違いを超えて評価しなければならない。総務課を見てみましょう。経理の伝票処理をする人、採用業務に携わる人、技術部では、皆違う商品開発を担当している。同じ商品開発のチームでも、担当する部分は異なる。

学校における生徒を評価するのとは大きな違いです。この違いは非常に大きい。従って、評価の難しさは何倍も大きいと言えましょう。そうです。学校の生徒評価は、職場と比べたら簡単な筈です。しかるに、先生方も絶対評価には、大変な御苦労をされています。この事実に注目して下さい。

今、人事御専門の先生方も、多くは、人事評価(人事考課)も、絶対評価(絶対考課)を推奨されています。そして、評価基準(人事考課表)をしっかり創ることを提唱されております。誰が評価しても、同じ答が出るような、そんな評価基準(人事考課表)が可能であり、それに向けて努力を促しているように思われる場合もあります。しかし、その努力は報われるでしょうか。人は皆、周りを見回せば、あの人はよくやってる。彼はすごく貢献してると、意識する、しないは別にして、日々評価をしています。そして、人の評価など、本来自明の事をやるのだから、少し、評定基準(人事考課表)を精密にすれば、問題は無い筈と考える人、人事、経営に携わる人、エリートに多いようです。この評定基準(人事考課表)を少しだけ、しっかりしたものを創れば解決するという、この幻想が人事制度を迷わせてきました。

それなりの取り組みをすれば、公正な評価を可能にする、理想的な評価基準(人事考課表)はできる筈、今の評価制度が、結果が受け入れられないのは、評価基準に問題があるからだと、人事制度の問題点を、評価基準(人事考課表)の不備にもっていく、よくあるケースです。この発想を推し進めていくと、各職場、求められる職務内容を精密に分析し、その求められる所と、応える側の成果を比較するなら、正しい、公正な評価が生まれるだろうと。この観点から導き出された制度が、職務給制度でした。仮に、ここまでは到達したとしても、各職務の価値設定、難易度評価、職務単価設定の課題が残りますが、評定される側が納得するには、大変な作業を消化せねばなりません。

(御参考頁 職務給制度は、失敗の成果主義からの撤収に有効か?

技術革新も、ビジネススタイルも、今程変化の早くない時代なら、評価の考え方、方法として、決して間違っていないと言えましょう。フォードが流れ作業で、自動車を作り始めた時代、経営学のこの分野は、この作業に標準時間何秒と、作業分析、工程分析を行う方法論が提唱され、日本の流れ作業の管理にも、協力会社への単価交渉にも、有効なコスト管理手法として活かされてきました。しかし、今、多くの職場は、そんな手法は通じません。

ジャパンアズナンバーワンと言われた時代、米国は、強い日本を分析研究した結果、日本の人事制度の中に、「協調性」という、特異な評価項目のあることに注目したようです。その後、あちらの表現では、「チームワーク」として、この、極めて、評価基準の規定し難い項目を、評価の中の重要な要素としている職場もあるようです。

職務分析から、各職場で、多くの時間をかけて、詳細かつ精密なものを創った。全体の整合性については、人事部が公正な答を出した。その結果、完璧なる評価基準(人事考課表)が完成した。誰が評定者となっても、対象が同じなら、評定者訓練をした管理職たちは、同じ評価結果を出す。そんなゴールがあると考えますか?人事制度の事例も、多く書物となって世に出ておりますが、そのような完璧な評価基準を見たことがありますか?人事制度を考える時、間違い易い理想のイメージ、この幻想を捨てましょう。

○ 評価基準の限界を解決する方法・成果主義・目標管理制度 ○

評価基準(人事考課表)を如何に精密に規定しても、評価は評定者によって変ってしまう。従って、恣意的な評価も排除できない。どれがが正しい評価かの判定も難しい。そこに登場したのが、成果主義、目標管理制度であった。業務の取り組み方を云々せず、アウトプットのみを評価するなら、評定基準書で悩むことはない。公正な、明確な評価が実現できる。この発想の違う評価の考え方、言葉の響きは、悩める人事担当者、組織のトップを惹きつけた。しかし、ここにも難題が待ち構えていたようです。

(御参考頁 目標管理制度も評価に課題

○ 絶対評価を推奨しながら、最後に相対処理 ○